温室・植物工場の熱中症対策— ハウス内の高温多湿
公開: 2026年9月2日
温室・植物工場は、
ハウス内の日射と加湿設備により、
夏季でも気温35度超・湿度80%超が続く環境になります。
屋外予報よりWBGTが高いことが多く、
通路での選果・梱包作業が長時間続く点もリスクです。
本記事ではハウス内の高温多湿を前提にした判断ポイントを整理します。
対策の中心は「ハウス別実測」と「作業ローテーションの固定」です。
早朝の選果作業と午後の出荷準備を同じ基準で管理しにくい点も、
温室特有の論点です。
ハウスごとに湿度と温度が異なるため、
入口ごとの実測記録が判断の起点になります。
新人や季節工はハウス慣れに差があるため、
初日の作業範囲を個人別に限定します。
散水直後は湿度が急上昇するため、
該当ハウスへの新規投入前に再測定を行います。
1. 温室・植物工場現場のリスク
1-1. ハウス内の日射と湿度
天窓からの日射とミスト加湿が重なり、
立位作業者の体感温度は予報値より5度以上高くなることがあります。
WBGT計は作業者の胸元高度に設置し、
通路と栽培ベッド端で別々に測定します。
測定値は作業開始前と午前中の2回を原則とし、
差が大きい日は厳しい方を採用します。
作業環境記録の付け方も参照してください。
1-2. 植物工場の空調限界
LED照光と空調が共存する区画では、
空調故障時に数時間で温度が急上昇します。
バックアップ換気と作業中止基準を事前に決め、
故障時の連絡網も掲示します。
空調のない倉庫・工場の暑さ対策も参照してください。
1-3. 通路作業の連続負荷
選果・梱包・出荷準備は立位が続き、
作業強度は中程度でも時間が長いと深部体温が上昇します。
1時間ごとの短休憩を手順に組み込み、
同一通路への連続投入時間にも上限を設けます。
2. 作業判断とスケジュール
2-1. 早朝作業と午前中集中
夏場は5時半開始で午前中に重作業を終え、
午後は管理室での記録・資材準備へ切り替えます。
予報WBGTと組み合わせ表を照合し、
午後の投入を原則禁止とする日も事前に決めます。
WBGT予報と作業強度の組み合わせ表と照合してください。
2-2. ハウス別ローテーション
同一ハウスへの連続投入を避け、
30分ごとに別区画へ移動するローテ表を作成します。
移動時間も休憩としてカウントし、
ローテ未実施日は日報に理由を1行残します。
2-3. 加湿・換気設定の見直し
前日の降雨後は湿度がこもり、
曇天でもWBGTが上昇しやすいです。
予報と実測の厳しい方を採用し、
散水直後30分は該当ハウスへの新規投入を控えます。
梅雨時の熱中症リスクも合わせて確認してください。
3. 現場で取るべき対策
3-1. 冷却ベストと水分基準
1人当たり電解質入り飲料2リットル以上、
冷却タオル、
冷却ベストを持参必須とします。
持参量不足で出発した場合は作業開始前に事務所へ戻るルールを設けます。
水分・塩分補給の周知と実施記録も参照してください。
3-2. ハウス内休息コーナー
各ハウスに日陰相当の休息スペースを1か所設け、
15分/時の短休憩を原則とします。
扇風機と冷却スポットを常備し、
夏前に点検記録を更新します。
3-3. 新人・季節工の段階投入
ハウス慣れが不十分な新人は初日は管理室近くの軽作業のみとし、
翌日から段階的にハウス内へ移行します。
暑熱順化計画書の進捗も同時に確認し、
個人別の移行計画表を用意します。
4. 記録と振り返り
4-1. ハウス別WBGT記録
各ハウス入口でWBGTを測定し、
作業短縮・中止を行った日は理由を1行で残します。
栽培区画ごとに数値差が大きい日は高い方をその日の判断基準とします。
事案記録の残し方も参照してください。
4-2. ローテーション実施記録
当日のローテ表と実際の移動記録を照合し、
未実施があれば翌日の重点確認項目にします。
代理応答の有無も同じ行に記載します。
4-3. シーズン終了時の集計
7〜9月の中止・短縮日数、
ハウス別最高WBGTを集計し、
翌年の栽培計画へ反映します。
事案ゼロでも振り返り会議を実施し、
換気設備更新の優先順位付けにも活用します。
集計結果は安全衛生委員会資料へ添付し、
版数と更新日も記載して保管します。
5. 作業場所別リスク整理表
5-1. 場所の分類基準
作業場所を「通路/ベッド端/出荷場」で分類し、
分類ごとに最低限の対策セットを文書化します。
分類は春のリスクアセスメント更新時に見直します。
5-2. 判断表(例)
| 作業場所 | 追加対策 |
|---|---|
| 選果・梱包(通路) | 30分/時休憩・ローテ移動・冷却ベスト着用 |
| 栽培ベッド端作業 | 15分/時休憩・水分1時間ごと・同伴作業 |
| 出荷場搬入 | 午前中集中・日陰待機地点指定 |
表は朝礼前に該当行を読み上げ、
その日の追加対策を全員で確認します。
5-3. 表の更新タイミング
新規ハウス増設や作業方法変更時は表へ行を追加し、
版数と更新日をフッターに記載します。
更新後は全作業者へ配布し、
旧版回収日も管理台帳に残します。
6. 朝礼と当日判断の流れ
6-1. 出発前5分の確認項目
事務所出発前に「予報WBGT・作業ハウス・ローテ表・水分携行量・休息地点・連絡間隔」の5項目を口頭確認します。
確認結果は作業日誌の先頭行に記入し、
変更があった場合は理由を同じ行に追記します。
未確認項目がある場合は出発を保留し、
確認完了後に作業を開始します。
6-2. 現場到着後の実測
ハウス入口でWBGTを1回測定し、
予報より2度以上高い場合は作業開始を30分遅らせるか軽作業へ切り替えます。
測定値・判断・実施した対策を作業環境記録に残し、
午前中に再測定を実施します。
通路と栽培ベッド端で数値差が大きい日は高い方の測定値をその日の判断基準とし、
低い側の作業も同じ基準で短縮します。
6-3. 帰庫時の振り返り1行
各作業者が「今日いちばん暑かったハウス」「休憩が足りなかった時間帯」を1行ずつ日報へ記載します。
班長は翌朝前日の記載を読み上げ、
同じ見落としが繰り返されないよう対策を調整します。
週次で集計した振り返り行は安全衛生委員会資料の添付として保管します。
よくある質問
Q. ハウス内作業は屋内扱いになりますか?
連続1時間以上または1日4時間超の作業があれば対象になり得ます。
空調があっても実測WBGTが基準を超える日は屋外と同様に管理します。
Q. 植物への散水時間と作業時間が重なります
散水による湿度上昇を考慮し、
散水後30分は該当ハウスへの新規投入を控えます。
実測値で判断を固定し、
例外は日報に理由を残します。
Q. ミスト設備の水しぶきは熱中症対策になりますか?
体感を下げる効果は限定的です。
休憩・水分・作業時間短縮を主対策とし、
ミストは補助と位置づけます。
Q. 夜間の出荷作業も対象ですか?
夜間でも湿度が高い日はWBGTが基準に達することがあります。
夜間帯も測定と記録を行い、
基準超過時は時間短縮を検討します。
Q. 秋の残暑期も同様ですか?
ハウス内は日射が弱まっても湿度が残るため、
同様のローテと記録を継続します。
秋口の残暑対策も参照してください。
まとめ
温室・植物工場は屋外予報よりハウス内WBGTが高くなりやすく、
ローテーションと実測をセットで運用する必要があります。
早朝スケジュール、
ハウス別記録、
休息コーナーの整備を徹底してください。
シーズン終了時に短縮・中止日を集計し、
翌年の栽培計画へ反映させてください。
注意
本記事は運用の観点整理であり、法的助言・医療的判断ではありません。
個別の症状・対応については 専門家・医療機関にご確認ください。
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