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醸造・ワイナリー作業— 熱中症対策

公開: 2026年9月2日

醸造所・ワイナリーでは、 発酵槽周辺の高温多湿、 夏のぶどう収穫、 樽詰め作業の密閉空間など、 一般の工場とは異なる 暑熱リスクが重なります。
特に小規模ワイナリーでは 季節雇用者が 収穫期に一気に増え、 順化教育が 追いつかないことが あります。 本記事では、 醸造・ワイナリー作業に 特化した 熱中症対策の 整理ポイントを まとめます。

1. 醸造・ワイナリー特有のリスク

1-1. 発酵槽・醸造室の高温多湿

発酵中は 槽内温度が 20度台後半から 30度近くに 上がることがあり、 周辺の湿度も 高くなります。 槽の蓋開閉や 比重測定を 繰り返す作業員は、 短時間でも 強い負荷を 受け続けます。

1-2. 収穫期の屋外作業

8〜9月の ぶどう収穫は 早朝開始でも 気温上昇が 早く、 段ボール詰めや 選果台での 立ち仕事が 続きます。 日よけ帽子だけでは 足りず、 WBGT測定と 休憩の ルール化が 必要です。

1-3. 樽庫・地下貯蔵庫の温度差

地下の 貯蔵庫は 涼しく感じても、 夏の搬入路や 荷下ろし口は 外気に 晒されます。 温度差による 体調不良も 起こりうるため、 搬入作業は 時間帯を 分けて 計画してください。

2. 作業別の対策例

2-1. 醸造室での換気・休憩

醸造室は 換気扇の 能力と 作業人数の バランスを 見直します。 1時間あたり 15分の クールダウン休憩を 槽作業日に 必須化し、 休憩所へ 冷たい 電解質飲料を 常備してください。
作業環境記録の 付け方はこちらも参照してください。

2-2. 収穫班の交代制

畑作業と 選果作業を 30分ごとに ローテーションし、 同じ posture を 続けない 配置にします。 シニアスタッフが 新人を 単独で 畑に 送らない ルールも 有効です。

2-3. 試飲・品質検査の見落とし

試飲室は 冷房が 効いていても、 その前後の ボトリングラインは 暑いことが あります。 ライン作業員にも 測定・休憩の 基準を 適用してください。

3. 季節雇用・見学者への対応

3-1. 収穫期前の15分教育

季節雇用者には 初日に 熱中症の 初期症状、 報告先、 休憩場所を 口頭と 掲示で 説明します。 受講サインは 名前と日付を 1行で 残してください。

3-2. ワイナリーツアーとの兼用

見学客が いる日は 作業動線と 混ざらないよう 班を分け、 作業側の 休憩時間を 削らない よう 工程表に 明記します。

4. 記録とWBGT判断

4-1. 測定点の設定

醸造室・ 選果場・ 畑端の 3点を 代表測定点に 指定し、 収穫期は 1日2回 測定します。
WBGTと 作業強度の 組み合わせはこちらも参照してください。

4-2. 事案発生時

収穫期は 人員が 入れ替わり やすいため、 事案記録に その日の 班構成と 実施していた 対策を 必ず 記載します。

5. 収穫期の現場シナリオ例

5-1. 午前7時の選果台

例:山梨の小規模ワイナリーで、 8月下旬の選果が始まった日。 気温26度・湿度70%で 「まだ涼しい」と 現場監督が判断し、 10名の季節雇用者が 2時間連続で 選果台に 立ち続けた。 9時半に 1名がめまいを訴え、 以降は 30分ごとの 全員着席休憩と 選果台への 扇風機設置を 義務化した。 この変更は 安全日誌に 「WBGT未測定のため 体感判断→ 10時測定28度で ルール改定」 と記録した。

5-2. 醸造室と畑の往復

醸造責任者が 発酵チェックの たびに 35度近い 醸造室へ 入り、 そのまま 日差しの 強い 搬入路を 通る パターンは 負荷が 累積 します。 醸造室 出入り 回数を 1時間 3回 上限に し、 それ以上は 副担当へ 委譲 する ルールを 醸造 ログに 追記 してください。

6. 作業別判断表(例)

作業WBGT28度超の追加対策
ぶどう収穫・運搬15分休憩/時・早朝シフト中心
発酵槽開閉・比重測定1時間3回上限・換気強化
ボトリングラインライン30分交代・冷房点検

表は 社内 組み合わせ表の 付表として 収穫期前に 配布し、 班長 教育 資料に 含めて ください。

7. 記録と振り返り

7-1. 収穫期日報の1行フォーマット

「日付・測定点3値・ 季節雇用人数・ 実施対策・ 体調申告異常の有無」 を1行で 残すと 監査 対応が 楽 です。 異常 申告 が あった 日は シフト 変更 内容 も 同じ 行 に 追記 してください。

7-2. 収穫後の振り返り会

10月に 1時間 の 振り返り を 実施 し、 「測定 忘れ 日」 「休憩 削った 日」 を 洗い出して 翌年 計画に 反映 します。 振り返り 議事録は 教育 記録 フォルダに 保管 してください。

よくある質問

Q. 発酵の温度管理と作業者の休憩は両立できますか?

槽の 遠隔モニタリングを 活用し、 人が 常時 槽前に 立つ必要が ない時間帯を 休憩に 充てる 運用が 可能な ケースも あります。

Q. 小規模醸造所は何から始めればよいですか?

簡易WBGT計、 休憩所の 整備、 救急連絡先の 掲示の 3点から 着手するのが 現実的です。

Q. 収穫期だけ対策を強化すれば足りますか?

醸造室は 通年で 高温多湿になり うるため、 年間を 通じた 測定と 教育が 必要です。

Q. 見学客向けの説明と作業員向けの対策は分けるべきですか?

分けて 管理します。 見学は 短時間・ 日陰ルートに 限定し、 作業員の 休憩時間を 削らない 工程表を 別途 維持してください。

Q. アルコール環境は熱中症リスクを変えますか?

蒸気・ 湿度・ 作業強度の 評価は 通常の 職場と 同様に 行います。 体調管理は 医療機関に ご相談ください。

8. 醸造責任者・現場監督の週次確認

8-1. 月曜5分のアジェンダ

収穫期の月曜朝礼では、今週の気象予報WBGT、季節雇用者の新規入場有無、醸造槽の開閉予定、選果台の扇風機稼働確認、前週の体調申告異常の有無を5分で共有します。異常申告が1件でもあった週は、原因が測定不足か休憩不足かを分類し、再発防止策を同じ朝礼で1行決めて安全日誌に転記してください。醸造と畑作業を兼務するスタッフがいる場合、兼務日の負荷上限(例:畑4時間+醸造室2時間)を名簿横に記載し、超過前に副担当へ引き継ぐ運用を徹底します。

8-2. 設備点検と熱中症の接点

換気扇ベルト交換、冷却設備点検、ボトリングラインの冷媒圧確認は、設備保全と熱中症対策の両方に直結します。点検記録票の末尾に「作業中WBGT・休憩実施」を追記し、設備と安全の記録を1枚にまとめると監査時の説明が楽になります。樽庫の湿度管理は品質用ですが、作業員の体感温度にも影響するため、作業前後の温湿度を1行ログに残す習慣をつけてください。

9. 他業種との違いを押さえる

一般の製造業と異なり、ワイナリーは「品種ごとの収穫窗口が限られる」ため、天候に左右されず作業時間を延ばしたくなる心理が働きます。しかしWBGT基準超過日に収穫量を優先すると、翌日以降の作業員不足につながり、結果として総収量を損ねることがあります。オーナー・醸造責任者が「安全側に倒す判断」を明示的に支持するメッセージを収穫前に全スタッフへ送ることが、現場の報告文化を変える第一歩になります。収穫後の振り返りでは、実際に収穫量を落とした日と、無理をして続けた日の体調申告件数を並べて比較し、翌年の計画資料にしてください。

10. 年度末の保管

収穫期の日報・測定記録・教育サインは年度フォルダにまとめ、翌年のたたき台として活用してください。

11. 品種別収穫窗口と安全

早生品種と晩生品種では収穫ピークがずれ、人手配置も変わります。晩生品種の収穫週に早生品種の醸造チェックが重なると、同一スタッフが畑と醸造室を往復する負荷が最大化します。収穫カレンダー作成時に、スタッフ1人あたりの兼務上限時間を可視化し、超過前に副担当へ振り分ける表を貼り出してください。

まとめ

醸造・ワイナリーは 発酵の高温多湿、 収穫期の 屋外作業、 季節雇用の 入れ替わりが 重なる 職場です。
測定点の設定、 班のローテーション、 初日教育と 記録を セットで 運用してください。

注意

本記事は運用の観点整理であり、法的助言・医療的判断ではありません
個別の症状・対応については 専門家・医療機関にご確認ください。

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